2018年08月02日 (更新:2020年06月18日)
DC2インテグラ徹底解説!スペックから他車比較、カスタム例も!
生産終了から年月が経過した今でも熱狂的な人気を持ち続けている孤高のFFスポーティカー、インテグラ。そのインテグラの中でも2代目モデルとなるのがDC2型インテグラです。この記事では、DC2型インテグラについて、トップグレードである「タイプR」を中心として、グレード、他車比較、カスタム事例まで徹底解説します!
インテグラ(DC2型)の基本情報
ホンダのミッドサイズセダン/クーペとして、クイントインテグラ→インテグラとして時代によって名前を変えながら、2006年の最終モデルの生産終了から10年以上経った現在に到るまで多くの支持を受け続けているインテグラ。その歴史の中でも3代目(クイントインテグラから数えて。「インテグラ」としては2代目)にあたるモデルが、1993年に登場したDC2型インテグラです。
特徴的な丸目4灯ヘッドライトのフロントマスクをまとって登場したDC2型(1800CC3ドアクーペモデルの型式、1600CCモデルはDC1型、4ドアセダンモデルはDB6/7/8/9型)インテグラのアピールポイントはなんといっても高い走行性能でした。1991年に登場していた5代目シビック(EG型)とプラットフォームを共有し、好評だったシビック譲りの4輪ダブルウィッシュボーンサスペンションにより、インテグラは当時のFF車の中では最高クラスのハンドリングを実現していました。また、エンジンも先代DA型に搭載された、可変バルブタイミング・リフト機構VTECを搭載したB16A型をさらに進化させたB18C型エンジンを搭載、リッター100馬力という驚異的な性能はそのままに、排気量アップによりさらなるパワー・トルクアップを果たしました。
そして1995年、丸目4灯から横長ヘッドライトへの大きなデザイン変更を伴ったマイナーチェンジと同時に、ついに本気のスポーツグレード「タイプR」が登場します。1992年に登場したNSXタイプRのような本物のスポーツカーを、より多くの人々が手に入れられる価格帯で提供するというコンセプトのもと開発されたインテグラタイプRは、バッテリーの小型化や快適装備の省略による徹底した軽量化や、フレームの一部肉増しなどによる剛性アップ、さらにはエンジンチューニングやトランスミッションのクロスレシオ化など細部に至るまで市販車とは思えないほどのチューニングが施され、上位クラスのスポーツカーをも食いかねない最速のFFピュアスポーツカーとしてクルマ好き達の注目を浴びました。
名車N360以来ホンダが得意とするFFレイアウトを持ち、エンジンはVTEC、そしてNSXを基幹とするホンダのスポーツスピリッツが込められた、まさにホンダ入魂の一台と言えるのがDC2型インテグラなのです。
インテグラ(DC2型)のバリエーション
一口にDC2型インテグラといっても実は様々なバリエーションが存在します。この項ではそんなDC2インテグラのバリエーションの一部を紹介します。
タイプRだけじゃない!スポーティ インテグラ:Si VTEC/SiR/SiR-Ⅱ/SiR-G
タイプRばかりがどうしても注目されがちなインテグラですが、タイプR登場前夜にもスポーティグレードは存在していました。それがSi VTECです。「ドラマチック・レスポンス」のキャッチコピーとともに現れたSi VTECはその名の通り180PS(つまりリッター100馬力!)という、タイプRには劣りますが当時としては驚異的なスペックを持つB18C型VTECエンジンを搭載し、優れた設計の足回りと組み合わさってFFスポーティカーとしてはトップクラスの走行性能を実現していました。Si VTECはタイプRほどストイックなスポーツグレードではなかったため、ATグレード(エンジン出力は170PS)やサンルーフ等の快適装備も用意されました。
このSi VTECは1995年のタイプR登場後も「SiR」と名を変えて継続設定され、豪華な方から「SiR-G」「SiR-Ⅱ」「SiR」と3種類のグレードが用意されるようになりました。ちなみにインテグラシリーズ全体でSiR-Ⅱのみ、1998年のマイナーチェンジに伴うグレード整理で消滅するまで、登場当初とは少しデザインを変えながらも特徴的な丸目4灯ヘッドライトを維持し続けていました。
タイプRの影に隠れがちなこれらのグレードですが、よりカジュアルに、個性的にインテグラを楽しみたい人にはRよりもこちらが良いかもしれませんね。
荒削りな最初の「R」:タイプR 95&96spec
1995年、ついにあの「タイプR」がインテグラシリーズに加わります。
タイプRはインテグラの名前と基本コンポーネントを標準車(SiRグレード)と共有しながらも、ピストンやカムシャフト、インテークマニホールド/エキゾーストマニホールド、ECUなどを変更し200馬力を発生させるスペシャルチューンを施されたB18C型エンジン(通称B18CスペックR)を搭載し、トランスミッションはクロスレシオ化された上にヘリカルLSDを装着、さらにはハブの変更をも伴う足回りの強化や、エアコン、リアワイパー、オーディオ、遮音材等の省略やフロントガラス、バッテリー等の軽量なものへの変更による徹底した軽量化、そしてモノコックフレームの鋼板を厚くすることによるボディ補強を行うなど、別の車といって良いほどの徹底したチューニングが施され、それまで販売されていたライバルの比にならない実力を持った国産最速のFFスポーツカーとして多くの自動車メディアやスポーツカーファンたちから熱い注目を浴びました。
95&96スペックは、そんなインテグラタイプRの中でも、その通称の通り1998年に行われたマイナーチェンジよりも前に製造されたモデルを指します。95&96スペックは後のインテグラタイプRよりも比較的ピーキーな乗り味を持つとされ、現在でもその乗り味を好み、インテグラタイプRの中でも95&96スペックにこだわって乗り続けているユーザーもいるようです。ちなみに95&96スペックの中でも特に初期に(つまり1995年中に)製造されたモデルはエンジンのポート研磨を手作業で行っており、1996年以降に製造されたモデルよりもさらにエンジン性能が良い(とされている)こととその台数の少なさから「幻の95スペック」と言われマニアから珍重されています。
より操りやすくなった「R」:タイプR 98spec
インテグラタイプRは標準モデルと同じく1998年に比較的大規模なマイナーチェンジを受けます。
「次のRへ。」というキャッチコピーとともに送り出された新型タイプRはメーカー自らによって「98スペック」と呼ばれ、大きな改良がアピールされました。タイヤのワイド化、ホイールのインチアップ、ハブの変更をはじめとする足回り各部の剛性アップ、ブレーキローターの大径化、エキゾーストマニホールドの軽量化、モノコックの高剛性化、ファイナルギアレシオのローレシオ化、ECU制御の見直し、HIDヘッドランプの採用等外装細部のブラッシュアップなど、95&96スペックから別物と言って良いほどの進化を遂げた98スペックは、それまでのモデルよりも走行安定性を大きく高め、多くの人々にとってより扱いやすいクルマとなりました。一方で、一部のファンからは95&96スペックにあった刺激が失われてしまったという意見もありました。
95&96スペックが実現したFFの枠を超えたハイパフォーマンスをより扱いやすい形に修正したモデルがインテグラタイプR98スペックであると言えるでしょう。
快適性を増した「R」:タイプR・X(99&00spec)
1999年、いよいよDC2型インテグラタイプRとしては最終型となるモデルが発売されました。
通称「99spec」もしくは「00spec」と呼ばれるこのモデルは、98スペックから大きな変更はないものの、平成10年アイドル規制への対応として型式がそれまでの「E-DC2」から「GF-DC2」へと変更され、またボディカラーに新色としてサンライトイエローが加わりました。このボディカラーを選ぶとステアリングとシフトブーツ、リアシートのステッチ、そしてフロントのレカロシートまでもが黄色となり、またそれまでも装着されていたインテグラタイプRの車名ロゴ入りアルミプレートにシリアルナンバーが入るなど、ただの一ボディカラーにとどまらない特別感が演出されていました。
99&00スペックで追加されたのはボディカラーだけではありません。専用スポーツペダルやカーボンパネル、そして電動格納式ドアミラー、キーレスエントリー、オーディオ、インパネのデジタル時計、オートアンテナ、プライバシーガラスといった快適装備を与えられた特別仕様車「タイプR・X」の追加も大きなニュースです。EK9型シビックタイプRにも用意されたこのグレードは、ストイック一筋だったタイプRシリーズの間口を広げるのに貢献しました。
99&00スペックでDC2型インテグラタイプRはスポーツカーとして名実ともに円熟の域に達し、有終の美を飾ったのです。
もう一つの「R」:アキュラ インテグラタイプR
欧米を中心に海外でも販売されていたDC2型インテグラタイプR。しかし、海外仕様のフロントマスクにはお馴染みの横長ヘッドライトではなく、前期型標準車譲りの丸目4灯ヘッドライトが与えられていました。また、アメリカ市場ではインテグラがホンダ系高級ブランド「アキュラ」から販売されていたため、アキュラロゴベースの赤バッジが与えられ、「アキュラインテグラタイプR」として販売されました。さらに、アメリカ仕様以外でもイギリス仕様には現地の法規適合のためにリアバンパーにフォグランプが与えられるなど、各国の仕様毎に細かい変更も施されていました。
このように、DC2型インテグラタイプRは仕向け地に応じたローカライズが施された上で広く海外展開され、日本のみならず世界中のスポーツカーファンを虜にしたのです。
インテグラ(DC2型)とセリカ(ST202型)の比較
1990年代のFFスポーツカーといえば、インテグラと同様に外せないのがST202型のトヨタ セリカでしょう。
この項ではDC2型インテグラタイプRとST202型セリカのFFトップグレード、SS-Ⅲを比較しながらインテグラタイプRのキャラクターをより深く見ていきます。
エンジン-レーシングエンジンの如きB18C VTECと実用性も考慮した3S-GE Beams
FFとはいえ2台ともクーペタイプのスポーツカー、ということでやはり走りについて触れないわけにはいきません。
まずはエンジンについて。2台とも4気筒のNAエンジンを搭載していますが、当然ながらどちらもスポーティな味付けが施されています。
まずインテグラRには、VTECシステムを搭載し、さらに先述のようなタイプR専用のスペシャルチューンが施された1800CCのB18C型エンジンが載せられています。このエンジンは1990年代当時FF車に搭載されたNAエンジンとしては最強の性能を誇っており、高回転まで勢いよく回るレーシーな味付けのエンジンとして多くの信奉者を生みました。
一方、セリカに積まれるのは2000CCの3S-GE型エンジンです。1980年代からトヨタの中型スポーツカーに搭載されてきたこのエンジンですが、ST202型セリカに搭載されているのはその中でも可変バルブ機構であるVVT-iシステムを持つBeamsシリーズに属するもので、カタログスペックではインテグラタイプRと同等の最高出力200PSを誇ります。
絶対的な性能面ではインテグラのB18Cの方がやや上ですが、排気量が大きい分セリカの3S-GEの方が中低速のトルクが太く、またそもそものセッティングがセリカの方が低回転寄りなので、街乗りで乗りこなしやすいのはセリカの方でしょう。レーシーで超高性能なインテグラタイプRか、実用域で気持ちよく走れるセリカかといったところですね。
足回り-基本を突き詰めたインテグラ、飛び道具のセリカ
エンジンパワーを路面に適切に伝える足回りはどうでしょうか。
先述のように、インテグラの足回りには、FFのハンドリングの常識を塗り替えたシビック譲りの4輪ダブルウィッシュボーンサスペンションが与えられています。また、タイプRにはさらにこれを専用にセッティングし直したものが与えられており、そのハンドリングの良さはFF車とは思えないとまで評されました。
トヨタもこれを黙って見ていたわけではありません。セリカにはダブルウィッシュボーンではありませんが、従来のマクファーソンストラットサスペンションをダブルウィッシュボーンに対抗できるように改良したというスーパーストラットサスペンションが与えられました。構造が複雑な故にカスタムやセッティングを行う際にはデメリットも大きいと言われるこのサスペンションですが、少なくともノーマルで乗る分には、従来のストラット式をはるかに超えるハンドリングを実現していました。
そもそもの設計でどうしてもインテグラの方に分があるため、この項目ではインテグラの方に優位があると言わざるを得ませんが、セリカも大きく劣っているという訳ではありません。スーパーストラットには従来の方式に工夫を重ねてやってやろうというトヨタの心意気が感じられるのではないでしょうか。
装備-やはりストイックなインテグラ、デートカーとしても使える?セリカ
走りはともかくとして、快適なドライブを支える装備面ではどうでしょうか。
この点では完全にセリカの勝利です。インテグラタイプRはそのグレードの性質から先述のように時計やオーディオ、遮音材といった快適装備は省かれています。モデル末期に追加されたタイプR・Xでさえ、その装備は当時当たり前になりつつあった装備が追加されている程度で、ライバルに対してアドバンテージと言えるほどのものはありません。
一方、セリカは特にSS-Ⅲについては最上級グレードということもあり装備は充実しています。オートエアコンやオーディオはもちろん、インテグラタイプRではオプションでさえ選べなかったサンルーフ等も装着できました。
このように快適装備ではインテグラはセリカに全く歯が立ちません。しかしその分インテグラの方が軽量に仕上がっているので、その代償と考えるとまだ納得できるという人もいるのではないでしょうか。
まとめ
以上のように、セリカと比較するとインテグラタイプRは非常にレーシーなキャラクターを持っていることがわかります。これは同時代の他のFFスポーツカーと比較してもだいたい同じでしょう。
快適性も重視され、絶対的な性能では負けるものの実用域で楽しく運転できそうなセリカと、多少の犠牲を払いながらFFスポーツカーとしての極限を追求し、ドライバーに他の車では絶対に味わえない刺激を与えてくれるインテグラタイプR。どちらを選ぶかは、あなたが愛車とどのように付き合っていきたいか次第です。
インテグラ(DC2型)のカスタム紹介
最後に、CARTUNEに投稿されているDC2型インテグラオーナーの方々のカスタム例をご紹介します。
「R」の定番!走り重視なゆみてぐらさんのインテグラタイプR
GTウィングと社外エアロを身にまとい、いかにもストリートのチューニングカーといった雰囲気のゆみてぐらさんのインテグラ。しかし、その性能は見た目だけではありません。このインテグラには社外スプリングを組み込み、またあえてリアスタビライザーを取ってしまうなど、ゆみてぐらさん自らによる走りに目を向けたこだわりのチューニング・セッティングが行われているのです。
インテグラタイプRの持つポテンシャルを引き出す勝つためのマシン作りを目指す姿勢がこのインテグラに現れていると言えるでしょう。
「R」らしからぬオトナな雰囲気を持つますけんさんのインテグラタイプR
ちょっと珍しい黒のボディカラーに身を包んだますけんさんのインテグラは、社外エアロこそ装着されているものの、全体的には落ち着いた雰囲気を持っています。しかし、バンパーのダクトなど走りに振ったパーツも奢られており、「オトナっぽさ」と「スポーティさ」が見事に両立されています。
ピュアスポーツのイメージが強いインテグラですが、このような落ち着いた仕上げ方も可能なのです。
純正を活かしつつの脱定番!サカキさんのインテグラタイプR
派手なエアロパーツなどを装着していないにも関わらず独特のクールな雰囲気を放つサカキさんのインテグラタイプR。その秘密は、あえてインテグラタイプRの定番であるスポーツ系ホイールではないホイールチョイスと、魅せるために考え抜かれた車高やキャンバーといった足回りのセッティングです。これがインテグラのシルバーのボディカラーと相まって、インテグラが本来持つスマートなデザインが強調されているのです。またフロントウィンドウのステッカーやスモークユーロテールといった細部も見逃せません。
走りのイメージが強いインテグラタイプRですが、デザインの良さを活かしてここまでできるというお手本のような一台です。
自分で作る「R」!?かずのこ♪さんのインテグラSiR改タイプR
純正色にはないブルーメタリックに全塗装されたタイプR・・・かと思いきや、かずのこ♪さんのインテグラのグレードはなんとSiR。それにホンダ系有名チューナー、スプーンのコンプリートエンジンを載せ替え、駆動系も98スペックタイプRのものに変更し、ボディ以外はほぼタイプRと同等に仕上げられているのがこの一台です。
こだわりとアイデアが生み出した唯一無二の「羊の皮をかぶった狼」な一台と言えるでしょう。
終わりに
いかがでしたでしょうか。以上のように、DC2型インテグラはFFの限界を突き詰めた本気のスポーツカーであり、その魅力はピュアスポーツカーが減ってしまった今だからこそさらに際立つと言えるでしょう。
その走りの良さをカジュアルに楽しむも良し、競技の世界でそのポテンシャルをフルに活かすも良し、はたまたデザインの良さを活かしてカスタムするも良し。登場からすでに15年が経過したいま、ホンダの極上FFスポーツを楽しむのはそろそろラストチャンスかもしれません。