Sクラスセダンのベンツ遍歴 ③ W220 S350・追憶に関するカスタム事例
2023年11月17日 17時16分
Sクラスへ‥W220 S350です。
W220Sクラスが登場した時は衝撃的でした。
スタイル、構造共に強さを主張したW140から一転して、ダウンサイジング、ソフト路線‥。巷では、Sらしくないと賛否両論でしたが、流麗で若返ったスタイルが私は好きでした。
W220のデビュー間もない頃、横浜の港北インターの出口で初めて実車が走っていく姿を見ました。新色のカルセドニーシルバーという少し水色がかったシルバーのS500Lでしたが、すごくエレガントに見えました。
W220を実際に自分が運転したのはもう少し後でした。仕事の取引先のとある社長さんが、W210 E320アバンギャルドからS430に乗り換えていて、商用の出張に同行した際、高速道路を運転させてもらいました。
セルシオなどのオプティトロンメーターそっくりの自光式の鮮やかなメーター、BOSEのスピーカーのきれいな音質、エアーマチックサスのマイルドな乗り心地。現代風にデザインされたシートなど、ずいぶん上品に変わったなあと感じました。
経年劣化著しい自分のE320と比べて、羨ましい気持ちになりました。
ちょうどその頃は、父の闘病と280SLのレストアなど私的な動揺を多く抱えていましたが、それとは裏腹に、仕事はうまく軌道にのり、少し余裕がある状況になっていましたので「欲しいなぁ」と思いました。
そんな時、タイミングよく、E320を譲って欲しいという方が現れました。ミッドナイトブルーのW210は本当に希少で、そのボディカラーゆえの話でした。その方が乗っていたのはW124の230E、ミッドナイトブルーでした^ ^ 私の父同様でミッドナイトブルーが好きな方だったのです。
E320の次のオーナーも決まり、新しいクルマ選びへ。車種はもちろん‥Sクラスでした。
ヤナセから2つの提案がありました。
Sクラスはマイナーチェンジを控えていて、在庫処分の前期型を大幅値引きで買うか、後期型の登場を待って買うか‥です。
悩みました。前期型であれば、大幅値引きの恩恵で、憧れのロングボディーS500Lになんとか手が届きそうでした。
ただ、もうその頃にはW220は後期型がワールドプレミアで海外発表されていました。車雑誌には、コストダウン一辺倒できたメーカーの姿勢に変化がみられ、かつての品質への回帰がみられる‥と取り上げられていました。
いずれにしても高い買い物で、しかも、自分の人生初のベンツの新車購入。父のE320の下取が元手にあったとはいえ、自分の身銭をきっての購入でしたので、後悔はしたくありませんでした。
結局、後期モデルを選択することにしました。グレードは、予算から必然的に一番安いショートボディのS350。
色も迷いました。最初はリセールが期待できる黒か白と思いましたが、頭の中に闘病真っ只中の父が思い浮かび‥。
300EとE320を私に譲ってくれて、自分ではコンパクトカーに乗っている父‥。大きなクルマの運転はもう無理だろうけど、Sクラスの後ろに父を乗せてあげたら父も気分がいいだろうなぁ‥そんなことを考えていました。
父の好きなミッドナイトブルーと紺革はもうすでに無く、それらに近いタンザナイトブルーと黒革を選びました。
左ハンドルで、オプションはガラスサンルーフとパークトロニック(駐車センサー)を選択。
希望ナンバーも、父の名前の語呂合わせの番号にしました^ ^(父の誕生日にしようとも思いましたが、11月29日で‥いいにく‥お肉屋さんのクルマになるので、名前に)
納車されたS350は、さながらショーファーカーのようになってしまいました。白いレースのハーフシートカバー、コーナーポールも勢い余って付けてもらいました(笑)思い詰めると暴走気味になる私は、父の専属運転手になる決意を固めて‥^ ^
ただ、その後、半年後に結婚が決まっていた嫁候補に、「タクシー🚕か!」と言われ、仕方なく、シートカバーもポールも外しました(笑)
S350の印象は‥。
3.7リッターに排気量アップがはかられたエンジンでした。ベンツのV6を所有するのは初めてで、しかも6気筒にしては大排気量。ボア・ストロークなど少し無理があるのでは‥と予想していましたが大丈夫でした。当然ですが、V8に比べてエンジン音はやや安っぽい感じでしたが、軽い車重でパワーは充分。
とにかく鼻先が軽いので、ハンドリングがよく、山道でも、サイズを感じさせない走りが可能でした。
残念だったのは、エアサスです。
これも、私としては史上初のエアサス車でしたが、乗り味はイマイチだと感じました。
確かに普通に乗っている分には滑らかな乗り味なのですが、高速走行時、ノーマルだとふわふわ、スポーツモードだとゴツゴツする感じで、ちょうど良い乗り心地にならず‥。ベンツのエアサスの歴史は長いので、期待していたのですが‥。エアサスはさすがのベンツもてなずけるのが難しいのだなぁと感じました。
幸いにも、前期型では多発していたようだった「エア漏れ」や「コンプレッサー故障」などのエアサストラブルは所有期間中には起こりませんでした。
室内空間は、E320よりもタイトに感じました。それはきっと後期型ではシートの厚みが再び増したためだと思いました。
ドライビングポジションのメモリー機能では、ハンドルとシート、そしてドアミラーの他に、なんとルームミラーまで電動で調整されるといった凝ったものでした。
私の350は生産が初期ロットで、しかも電気仕掛けの部分が多いクルマだったので、故障はある程度覚悟していましたが、大きなトラブルはほとんどありませんでした。
唯一、ナビシステムの交換のみ。納車後まもなく、スピーカーの音が鳴らなくなり、システムをそっくり交換してもらいました。
もっとも、メルセデスケアという3年間の無償保証がこの頃のベンツから標準装備になったため、安心感も違いました。
Sクラスを初めて所有して思ったことがありました。それは、その威圧的な存在感についてです。
スーパーマリオが⭐︎を見つけて、それによって無敵状態になったような‥。周りのクルマが避けてくれるという尊大な感じ‥。
事実、道を走っていると周りのクルマが避けてくれて、それが驚くほどラクな感じで、それはEクラスの時よりも格段に違いました。
でも、Sクラス以外のクルマに乗っているとき、そして他のSクラスに遭遇した時‥信号待ちで横に並ばれた時、後ろにつかれた時、前に停まっている時、そして、高速で後ろから迫って来られた時‥正直イヤだなぁと気付きました。進んで道を譲りたくなりましたし、車間をあけたくなりました(笑)
Sクラスの欠点は、そのイメージだなぁと思いました。W220になって、大分マイルドになったとはいえ、やはり未だ強烈なプレゼンスでした。
動力性能や安定感など走行性に優れていて、疲労感も少ないので、他のクルマよりも比較的速く、そしてその速度を維持しながら長い距離を走れるSクラスです。それがいつしか「そこのけ、そこのけ‥」の運転に‥。
道はみんなの物‥乗っている車種で優劣は決まりません。これはSクラスに限りませんが、どこか自慢気なクルマに限って、荒い運転をしているドライバーが多いと感じます。
Sクラスに乗るようになって、謙虚な気持ちを持って運転する方がカッコいいと自分に言い聞かせる機会が増えました。
謙虚な気持ちを持つというのは、きっと人の「生き方」についても同じことがいえて、そうすることで、まわりも、そして自分も幸せになれるのだと思います(変な宗教には入っていません。浄土真宗のみです(笑))
W220 S350はそんな「ゆとり」を私に与えてくれたクルマでした。