マーチのEP71スターレットターボ・マーチスーパーターボ・PD1989.6NEKOスポーツEP71ターボ東名自動車マーチスーパーターボ・ダートトライアル・ライバル対決に関するカスタム事例
2022年02月11日 15時56分
PD 1989.6
ダートラーCII マシンライバル対決試乗
EP71ターボvs マーチスーパーターボ
◾新設されたCII クラスは、いままでのクラス区分のなかに使えるクルマがない。
マシン製作は手探りの状態だ。そこで早々と登場した小林且雄EP71Tと土方重昭
マーチSTを徹底チェックし、両車の可能性を探ってみた。
東名自動車マーチスーパーターボ
●ラリーのBクラスはマーチRの出現で、あっというまにワンメークに近い状況に
なってしまっている。ダートラでは排気量区分がラリーとは違うため、EP71ターボ
とういう強敵がいるものの、AII クラスでは勢力を2分している。今後CII クラスでも
EP71ターボとマーチの勝負が見ものになると思われる。C地区第2戦でデビューした
土方重昭選手のCII 仕様マーチスーパーターボは、おそらく全国でも初めてデビュー
したマシンだろう。
CクラスはFIAもしくはJAFの車両公認が必要なため、このクラスに出場するには
マーチRではだめで、FIAの公認があるマーチスーパーターボをベースとしなければ
ならない。
今回のマーチの仕様は、まだパーツがそろっていないということと、土方選手が
FFに慣れていないという2つの理由から、かなりA車両に近いチューニングとなって
いる。唯一目立つ点といえば、FIA公認のアルミロールケージくらいのものだ。
その他のチューニングポイントを土方選手に聞いてみると
「とりあえず基本となるボディをしっかり作っておこうということで、ボディ補強
は海外ラリーに近い仕様にしてあります。エンジンは現在のところ150PS程度。
180PSくらいまでチューンできるようですが、それはドライバーがクルマに慣れて
サスペンションのセッティングが完了してから、と思っています」というところだ。
◆小林且雄のマーチSTインプレッション◆
とにかく軽さがいいよね。ぼくのクルマに比べるとむちゃくちゃ軽い感じがする。
マーチスーパーターボは排気量が930ccで、ターボ係数を掛けても1600cc以下の
クラスに入るから、最低重量制限が750kgになる。つまり、ぼくのEP71と単純に
140kgも違うわけだよね。
A車で走っているマーチRがノーマルで740kgだから、ほとんどA車と同じ感覚に
なるかな。ノーマルのクルマに乗ったことがないから、よくわからないところも
あるけど操縦性はとても素直だし、A車のいいところを残しているよね。
ただし、ちょっと気になったのが、トランクションのなさだね。今のところあまり
パワーが出ていないし、今日は特にエンジンのセッティングがいまいちだったから
パワーもノーマルとほとんど変わらないくらいでしょう。このくらいだったら
バランスも悪くないから、とても楽に乗れるだけど、今後、パワーを上げていった
ときに、ちゃんとパワーが路面に伝わってくれるかどうかが、チューニングの
ポイントになるんじゃないの。やっぱりボディが50PS程度の設定で作られている
から100PS以上のパワーを受けられるだけの容量がないみたいだ。ぼくのEPでも
トランクションということにかなり苦労しているからマーチはもっと大変なんじゃ
ないかな。
でも低速域をスーパーチャージャーで過給しているから、上のパワーを上げて
いった場合でもレスポンスが落ちないのがいいよね。日産では今後グループAの
ラリー用パーツをかなり出す予定らしいからそれが出たときは怖い存在になるね。
ただしチューニングは、スーパーチャージャーとターボチャージャーをダートラに
会わせてどう使いこなすかが難しいだろうね。あまりターボを大きくしてしまうと
下のほうでパワーが出なくなって、スーパーチャージャーを使う回転域が多くなって
しまうから、中速トルクが落ち込むんじゃないかな。いろいろとついているのは
便利だけれども、チューニングしていくには頭を悩ますエンジンだよね。
サスペンションは、現状ではソフトなほうの強化ブッシュに替え、ショック
アブソーバーとスプリングはラリー用のままだから可もなく不可もない。軽いボディ
重量も手伝ってレスポンスはいいよね。ただしリヤのリジットアクスルを支えている
ロッドの取り付けがあまり良くないせいか、リヤの落ち着きが少し悪い。S字なんか
でもスーッときれいに流れずに、3回くらい修正を繰り返す感じがあるんだね。土方
選手に聞いたら、今後はアッパーリンクをもっと長いものに替えて、ロールセンター
も変更するということだからだいぶ良くなるんじゃないかな。
ミッションはマーチRのノーマルミッションでレシオもそんなに悪くないし、容量
も1600ccのサニーと同じものらしいから、特に問題は出ないだろうね。ただ、LSD
は、ビスカスタイプしか設定がない。ラリーではビスカスタイプのほうが扱いやすく
てタイムが出るかも知れないけど、ダートラみたいにコースが初めからわかっている
ところでは、メカニカルタイプのほうがいいみたい。特にアクセルを思い切り
開けられるようなコーナーだと、イン側へ引っ張る力が全然違うから、立ち上がり
スピードにかなり影響すると思う。ニスモからメカニカルタイプのLSDが発売される
といううわさもあるからそれを待つしかないよね。
どちらにしても、マーチはメーカーがしっかりとパーツを作ってくれるだろうか
ら、今後どんどん速くなるだろうね。今のところまだCII クラス自体がそんなに
盛り上がっていないし、ドライバも有力な選手が少ないから、いまがねらい目
じゃない。先に少しでもセッティングを煮つめられた人が上にくるだろうね。
NEKOスポーツEP71ターボ
●ノーマルベースのAII クラスで最もポピュラーなEP71ターボだが、CII クラスでも
十分なポテンシャルがあるはず。ところがCクラスにはAクラスと違い最低重量制限
がある。EP71ターボは排気量が1295ccだから、これにターボ係数1.7を掛けると
2201.5ccとなる。これは排気量区分で言えば2000ccから2500ccまでの区分に入り、
最低重量は890kgとなる。EP71ターボのノーマルのボディ重量は、最も軽いターボR
で770kgだから、CII車両を作る場合ノーマルより120kg重くしなくてはならない。
小林且雄車の場合、内装を取り払った後での重量のせに苦心の跡がみられる。
小林選手に聞いてみると
「EP71ターボのボディは、不必要なものを取り払っただけで700kg近くになってし
まうんですよ。つまり、そこから190kg近く重くしなければならないわけで、
重量化には苦労しました。単純にバラストを積むのでは危ないから、ロールバーを
張り巡らせてボディ剛性を上げたり補強に必要以上の厚さの鉄板を使ったりして
少しでも性能に貢献するようなやり方をしています」とのこと。
またターボなので簡単なチューニングでパワーアップできるが「実際は4WDとは
違いホイールスピンが激しいから、なかなか簡単にはいかないんです。フラットな
トルク特性にするようにチューニングしています」とFFターボならでの苦労を語って
くれた。
◆土方重昭のEP71Tインプレッション◆
小林選手のEPは、ぼくのマーチと比べるとかなり激しい操縦性だね。重量も
かなり違うし、パワーもぼくのよりだいぶ出ているから、同じクラスのクルマでも
乗り方がだいぶ変わってくるだろうね。
まずエンジンは、現状で160PS程度ということだけど、ターボラグが小さくて
乗りやすい。ミッションもノーマルだからFFに乗りなれていないぼくにとっては
楽だった。小林選手によると1戦目ではAE92用の超クロスレシオのミッションを
使っていたらしいけども、さすがにターボでは使いづらくてノーマルミッションに
戻したみたい。
このエンジンで面白いのはブーストの切り替えが2段階にできることだよね。
インパネ上のスイッチでもそれは可能なんだけど、アクセルペダルの一番奥について
いるスイッチを入れるとブーストが全開になるというのがグッドアイデアだね。
アクセルコントロールが必要なところでは、最大チャージ圧を低めに設定して
ターボラグを小さくする。そしてパワーが必要な場所で思いきっりアクセルを
踏み込むとスイッチが入ってフルブーストがかかるようになっている。そういう
場所ではターボのタイムラグはあまり気にならないから、かなり思いきった
ブーストでいけるんだよね。まだ目標としてる220PSという強烈なパワーでは
ないからここで判断するわけにはいかないけれど、トランクションのかかりにくい
FFターボのチューニングカーでは役に立つシステムになるかもしれないね。まだ
エンジンはタービンを替えた程度でエンジン本体やインタークーラー、
インジェクションといったところにあまり手をつけていないようだから、今後
パワーを下から上まで出してきたら、マーチでは追いつけないようなパワーに
なるんじゃないかな。
この完成されかけたエンジンに対して問題はシャシー。ボディ重量がノーマルより
はるかに重たいから、素直な操縦性を出すのはかなり難しいね。ボディ剛性はかなり
上がっているし、サスペンションもほとんどピローボールで固めているんだけれど、
トランクションが思ったよりもかかっていない感じがする。もちろん、ベース車が
マーチよりははるかに容量があるからマーチよりはトランクションがかかる。でも、
マーチみたいにスーパーチャージャーが低速を助けてくれるわけじゃないから、
ターボが効き出すとホイールスピンが激しい。全体に前がかなり柔らかいような
感じだね。マーチはスーパーターボになってからフロントにかなり太いスタビ
ライザーが入っていて、フロントがのめるような感じがすごく少ないだけど、
これに比べるとEPはかなりフロントが大きくロールする感じなんだ。重量が
重たいことも影響しているだろうね。
操縦性に関しては、こんな具合で姿勢が作りにくい感じが大きいんだけど、
いったん向きが変わってしまえば、LSDの利きが強烈だから、ハイパワーで
がんがんインに引っ張っていってくれる。この感覚はビスカスのマーチには
ないものだね。特に島周りのコーナーみたいなところではマーチより抜群に速い。
TRDのLSDをさらにチューニングして、効き味を強烈に、さらにイニシャルトルクも
かなり上げてあるみたいだから、ちゃんと乗れないとタイムは上がらない。
ぼくみたいにFFにまだ慣れていないとかなり難しいクルマだね。特にステアリングが
激しく取られるから、ステアリングを押さえつけているだけでも大変だった。
ステアリングを戻すときも当然手を放すわけにもいかないし強烈なクルマだよ。
タイヤもトランクションを少しでも出すために185/65-15という、このクラスに
してはかなり太いタイヤをつけているから、それも影響しているんだろうね。
小林選手はこのクルマを振りまわしているんだから大したもんだ。普通の人だった
らパワステが必要だね。
◆"鬼の湯本"のライバル車一刀両断!!◆
マーチ・・・扱いやすいエンジンが長所
いかにパワーを伝えるか・・・EP71T
今回試乗したCIIクラスのニューマシンは、どちらもまだ完成してから日が浅く、
まだテストを重ねている段階なので、現状ではそのクルマのポテンシャルを
語ってしまうには問題がある。だから今回のインプレッションに関しては、今後の
可能性ということに重点を置いて話していきたいと思う。
まず、私が割りと乗り慣れているマーチだが、A車両にとても近いクルマで全く
違和感なく乗れる。ノーマルのマーチRとスーパーターボの違いは、フロントの
スタビライザーがスーパーターボに追加されたこと。これが操縦性の良さに大きく
貢献しているようで、マーチRにみられるようなフロントからののめり込むような
ロールがとても少なくなっている。これは操縦性の意味からも非常にいいことだが、
運転手の恐怖をなくしてくれるという意味からも重要なことだ。
サスペンション全体を考えた場合、これからパワーを上げていくとセッティングは
難しくなってくるだろう。現状ではパワーがあまり出ていないし、重量もノーマルと
同じくらいとはいえ、ウインドーやボンネットなどが軽くなっている分重心も
下がっている。だからノーマル以上にクセがなく、軽快でスムーズに走る。しかし、
パワーを上げていったときに、この長所を残すようにセッティングするには時間が
かかるのではないだろうか。また、このクルマはLSDがビスカスタイプで、
メカニカルタイプほど利かないからトランクション不足を感じた。たぶんサス自体に
原因があるのだろうがメカニカルタイプがつけばかなりトランクションは
増すだろう。
エンジンはまだまだパワーアップの余地を残している。特に土方くんの場合、
メンテナンスはすべて東名自動車だから、かなりいいエンジンができるだろう。
チューニングしていった場合、パワーの出方がどうなるかはわからないが、
低回転をスーパーチャージャーが補ってくれるため、楽に扱えるだろう。これは
非常に大きなアドバンテージだ。
一方、EP71ターボはマーチとだいぶ事情が違う。マーチに比べると重量がかなり
重いせいか、操縦性が全体的に難しくなっている。
まず、A車のEPターボに比べると、ボディ剛性が異常に上がっている。これは
バラストを積むよりもいいということで80kg近いロールケージや、補強で重く
しているからだ。その結果ノーマルのねじれ方とは違った動きをするようになって
しまったのかもしれない。
実際に乗ってみると、フロントが大きくのめり込むようなロールをしてフロントが
くいついてくれない。特にステアリングの初期のレスポンスがかなり悪いので
コーナーの入り口ではかなり苦労した。またボディが異常に硬いのと、
サスペンションにピローボールを使いあそびがなくなっているので、動きがシビアに
なりすぎコントロールしづらかった。
ボディやサスペンションの剛性を上げることは確かに俊敏な動きにつながることも
ある。しかし、ノーマルのようにねじれない分ごまかしが効かないから
サスペンションセッティングは難しくなってくる。もちろん海外ラリーのワークス
チームのようにありとあらゆるテストを行えば最適なポイントがみつかるだろうが、
ダートラのレベルでここまでのテストをするのは難しい。このボディを使って
サスペンションを完ぺきに仕上げるにはかなり時間をかけなければならないという
印象を受けた。
ボディは最低重量が890kgということで、ノーマルに比べるとかなり重たい
のだが、ノーマルのEPターボでも、最も豪華な仕様にエアコンやアクセサリー
などをつければ、830kgまでにはなると思う。そう考えれば890kgという数字は
それほど驚くほどのものではない。ノーマルの特性を生かしてチューニングできれば
まだまだ十分よくなる可能性があるのではないだろうか。
またエンジンは暫定仕様ではあったが、ターボということでかなり激しいパワーの
出方を予想していた。ところがサスペンションのセッティングを完了するまでは、
あまりくせのあるエンジンでは乗りにくいということで、かなりノーマル特性に
チューニングされていた。このためミッションもあえてノーマルにしていたが、
もう少しチューニングが進めばもちろんクロスミッションのほうがいいことに
越したことはない。このクルマはコルサなどに積まれている3E用のミッション
ケースをドッキングでき、中身はAE82、92用のクロスミッションを使えると
いうからパーツに困ることはないだろう。
どちらにしてもこの2台はこれからの可能性を十分に感じさせてくれるマシン
だった。現状では完成されたCI車両よりもタイムは劣るのだが、この2台がCI を
抜くのは時間の問題だろう。
2022年12月31日投稿 ダブルチャージクラブ ek-10stとやま