MR2のAW誕生話・AW・AW11に関するカスタム事例
2022年05月27日 21時39分
全国11億人のMR2ファンの皆様、こんばんは😃
写真は過去画です
AW開発秘話の続き〜👍
シャシー駆動系と共に、ボディやエクステリア・インテリア類の開発も進められるMR2。
だが、量産・市販を前提としたミッドシップというものは日本に前例がなく、また、ミッドシップそのものが特殊なレイアウトであることから、サスペンション開発がそうであったように、ボディやデザイン等においても、その方向性や味付けなど、多くの問題や課題が、開発陣を悩ませることとなる。
~MR2のボディ~
ミッドシップのボディは、実は本質的に数多くの弱点と欠点を抱えている。その主たるものの一つはボディ剛性の問題であり、もう一つは重量の増加である。
2シーターであるミッドシップはキャビンを狭く小さく作ることが可能であり、また、フロントノーズも短く設計することができるため、ボディ剛性の面では一見して有利なようにも思える。だが、エンジンを前後タイヤの中間に配置するということは、同時にメンテナンスの為の巨大な大穴をホイールベース内に設けなければならないということでもある。従って、ミッドシップはどうしてもボディ剛性の面で不利な造りとなってしまうのである。
加えて、ドライバーとエンジンが、通常のフロントエンジン車と比較して、かなりの至近距離に配置されてしまうこととなるため、自然、エンジンからの振動や騒音、熱などのストレスにドライバーは晒されることになる。
ダイレクトに背中から聞こえるエンジンサウンドこそがミッドシップの醍醐味であるという者もいるが、MR2はあくまでも日常での使用も加味した万人向けのパーソナルスポーティカーがコンセプトであり、しかも女性をも購買層の視野にいれたクルマである。ならば、それらの振動・騒音等は可能な限り抑えなければならない。すると、どうしても防振・防音・遮熱の為に、余計な素材をボディ各部に挟み込まねばならなくなる。
もちろん、ボディ剛性を向上させる為に、各部に通常なら不要なはずの隔壁や補強の鉄板も挟み込まねばならず、結果としてミッドシップカーの車重は同クラスのフロントエンジン車と比較して重いものになってしまうのだ。(たとえば、2輪駆動のSW20型MR2と、4WDターボのGC8型インプレッサが同じ重量になってしまう)
これらの問題に対して、MR2は高張力鋼板や樹脂部品を多用してボディ剛性の向上を図ると共に、コンピュータを用いた解析を行うことによって、剛性の確保・防音・防振はもちろん、開発期間の短縮にも成功する。鋼板も、防錆性の高いものを採用し、耐腐食性が図られる(※それから10~20年後、AW型はラジエーター周りの腐食が泣き所の一つとなるが、後継のSW20では完全に改善されている)
シート後方のパーティショントリムは、フェルト・ポリカーボネート・ポリエステル製不織布の三重構造となっており、防振・防音が図られる。それらも功を奏したのか、北米ではMR2ユーザーの50%が、英国では60%ものユーザーが女性となった。
ホイールベースは2320mmと、直接のヒントとなったフィアットX1/9の2202mmに対して長いものとなっているが、ホイールベースの長大化は右ハンドルを採用したが為にタイヤハウスとアクセルペダルの干渉を避けねばならない日本車の宿命でもある(ホンダ・NSXにおいても、同様の理由からホイールベースが試作段階で伸びたという)が、室内の居住性においてはX1/9に対して格段に快適なものとなっている。
車両重量は940kgと、そのショートホイールベースに比べて決して軽量とは言えないものとなってしまったが、トータルでの防振・防音・剛性・居住性等では世界の他のミッドシップを大きくしのぐものとなり、前後重量バランスも44.2:55.8と、リアヘビーになりがちなMRの中では、世界でもかなり前後均等に近い部類のミッドシップとなっている。
~MR2のエクステリア~
特殊なレイアウトを持つミッドシップカーのデザインには、多くの制約があるとされる。加えて、70年代や80年代においてはボディ造形の技術も、まだまだ未発達であり、例えそれがデザイナーにとって不本意なことではあってもランボルギーニやフェラーリのデッドコピーのような形状のミッドシップになってしまうようなことも多かった。加工技術が追いつかなかった日産・MID-4などは、その典型であり、MR2や、同時期に発売されたGM・ポンティアックフィエロもまた、フィアットX1/9とよく似たデザインになってしまっている。
日本初にして日本発のミッドシップとなるMR2。そのデザインコンセプトとされたのは、能面や日本刀など、日本の伝統的な美術・芸術であった。
初期の企画段階で、日本の伝統美を再調査・再検討をすることとなり、デザインテーマは「日本刀の反り」、すなわち日本刀の刀身における、鍛えられた鋼に蓄えられたエネルギーによって現出される、ごく自然に出来上がる曲線に決定される。実際、完成系のAW型において、サイドのウィンドウ下からフロントフェンダー、そしてノーズにかけて、日本刀の刀身、そして切っ先がイメージして形作られているのが確認できる。
単に美術的な要素だけでなく、機能的な要素からもエクステリアのデザインは煮詰められていった。例えば右リアの、エンジンルームへのエアインテーク。これは、ボディサイドを流れる風の流速が最も速くなる位置に設置されることとなる。70年代から80年代前半にかけて流行したNASAダクト(空気を効率よく取り入れられる形状とされる)も検討されるが、最終的には落ち着いたデザインのものとなる。
リア周りのデザインも、730Bではハッチバックスタイルが採用されていたが、熱の篭りや騒音がトヨタの基準をクリアできず、バットレスタイプのものとなる。主査の吉田は「最後までハッチバックにしたかった」と後に語ってはいるが、最後にバットレスタイプを推挙したのもまた、吉田であったと言う。
だが、このバットレスタイプとすることによって欠点も生まれる。それは空力の問題である。バットレスタイプは、ルーフより後部へと空気がうまく流れず、空力において不利となってしまう。これを改善するために、ルーフ後部に樹脂製のスポイラーを装着することによって少しでもCd値の低下が図られる。
また、当初はリアスポイラーのないデザインとなっていたが、高速走行実験において、横風安定性が良くなかったことから、新規に予算を申請してリアスポイラーの開発も行われる。このリアスポイラーの形状も試行錯誤がなされ、開発テスト中に自動車雑誌にスクープされた際のものや、後にモーターショーに発表されたもの、そして実際の市販車では各々の形状が異なっている。それが災いしてか、FRPの成型が追いつかず、初期の市販車両においてリアスポイラーは木製のものが装着されることとなった。
これらリア周りの空力処理に、デザイン担当者たちはかなりの苦心を強いられたという。
ヘッドライトには、スーパーカーの代名詞でもあったリトラクタブル式を採用。トヨタとしては、トヨタ2000GTからA60型セリカXX、A60型セリカ、AE85/86型スプリンタートレノに続く採用であった。
ギミックや構造、空力など、デザイン担当者は色々と試してみたいこともあったと語るが、予算の問題より、機構はセリカと共通のものが採用される。また、格納時に手を挟まぬよう、ライト前部に樹脂製のカバーが装着されることとなった。
ボンネットには、シンボルマークとして七宝焼の専用エンブレムが取り付けられる。
鷲鷹類を象ったこのエンブレムは、鷲鷹類の「進化による空力的美しさ」「敏捷さ」「力強さ」をイメージしたものである。
しつこく、続く〜😁