CX-3の長くはない・それほど待たせない・客席にいた筈なのに・知らぬ間に・舞台に立っているに関するカスタム事例
2022年10月19日 18時52分
ほんの数秒である
5秒はない
帰宅し
チャリを停め
エントランスを通り
郵便物を確認し
エレベーターの前に立ち
昇降ボタン△を押す
ほどなく扉が開き
乗る
行先階床ボタンを押す
なんということのない
日常のルーティン動作である
だが … 動かない
エレベーターが上昇しない
眼前の階床ボタンが点灯していない
すべての階が消えている
ほんの数秒である
5秒はない
ここで気づく
一階を押していたのである
一階から乗ったのにである
かの筒井康隆は言った
悲喜劇とは
浴槽の排水口にきゃ◯たまが吸い込まれ抜けなくなった状態であると
優れた観察眼に裏打ちされた
たぐいまれな識見を垣間見るようである
もしもこの状況下で
住人が帰宅し扉が開いたらどうであろうか?
一階に停まっていたエレベーターの昇降ボタンを押し、
開いた扉の箱のなかに
ぽかんとしたワシ
為す術なくたたずむワシ
諧謔のフレーバーをまぶした
老化の哀しみに
それでもふと可笑しくなる
告白しておく
これははじめてではない
三度目か四度目になる
いずれ
そう遠くないそのときを迎え
ぽかんとたたずむワシは
動かないエレベーターのなかで
ルーティンとなるだろう