ファルコンのマッドマックス・インターセプターに関するカスタム事例
2020年04月13日 00時09分
フォードファルコンXA〜XCは、日本車でいうところのトヨタ2000GT、ハコスカ、ケンメリのようなポジションのレジェンドカーです。
これをインターセプターに改造して販売しようものなら、オリジナル派にボロカスに叩かれて即廃業です。
日本で例えるなら、「トヨタ2000GTの屋根を切ってボンドカーのレプリカを製作販売しています!」くらい空気の読めないこと…といえば肌感覚で理解できますでしょうか。
なのでインターセプターのレプリカは、ほぼ100%に近い個体が解体車レベルの物からレストア再生しつつ製作されています。
本来ゴミである物から作ってるんだからいいよね?という免罪符と、ゴミから作ることで利益を乗せられるという二重のメリットが製作側にはあるのです。
ただ、レストアというのは「どこまで新品パーツを使うのか」で、仕上がりが大きく変わるのはもちろん、新品パーツを使えば使うほど製作費が高くなってしまいます。
国産旧車でも、ボディや塗装を完全に仕上げて、あらゆる部品を新品クォリティ、機関完全オーバーホール済にすれば、簡単に1500万円くらいのプライスになってしまいます。さらにインターセプター仕様にするとなれば、そこから追加で費用が発生するわけです。
当然、びっくりする値段になるので、業者は買いやすい値段設定になるように作ります。
つまり、そういう物ばかりなんです。
ここまで前置き。
もう随分前になりますが、とある地方のアメ車屋さんが全国紙に代々的に広告を打ってインターセプターを輸入販売していました。
既にその店は無く、以下の詳細は実際に購入した方達から伺った内容を、僕なりに組み立てたレポートであり、何ら確証があるものではありません。
備忘録として書き記しておきます。
前置きの内容を理解した上で見てください。
とあるアメ車屋(以下ショップA)が雑誌広告に出したインターセプターは、それはそれは多くのマニアの心に刺さりました。
まだ今ほど景気もドン底ではなかったこともあり、多くの方が注文を入れました。
この画像のインターセプターは、そのショップで最初期に購入された方の個体です。
ショップにインターセプターの在庫があるわけでは無く、仕様を指定してオーダー後に「現地で製作する」という流れです。この現地がどこかというと、オーストラリアではなく、お隣のニュージーランドです。
こちらのオーナー様は、お金を払ったものの、待てど暮らせど車が完成せず、電話で文句を言ってもスルーされるという状態が続いたそうです。
このままではヤバいと感じたオーナー様は、webを介して知り合った仲間と共に、ショップAを集団訴訟する事に。
ショップAにしてみれば、製作を現地の板金屋に任せている以上、完成車両が送られて来るまで待ってくれ… 以上のことが言えない。
このため、現地の板金屋のメルアドをお客さん達に公開することで決着。完成まで直接やり取りできるようになったそうです。
この頃の個体は、劇中と似てる似てないの差異こそ大きいものの、レプリカ中古車としては悪くない物だったようです。
グーグルマップでも発見できる、同じ業者が入れた個体です。
オーナー様とお会いしたことはありませんが、走っていた頃には地元のイベントに展示していたり、買い物の足としてスーパーに行っている所などの目撃情報が多数あったことから、最初の個体同様にそこまで悪いものではなかったようです。
こちらもショップAから購入された個体です。
オーナー様は非常に情熱のある方で、地元のショップで映画同様のスタイルにするべく手を入れ直したそうです。
オーバーフェンダーやスポイラーは、現地で取り付けた物を全撤去。鉄板の板金作業で、劇中のスタイルを完全複製。
「このリアスタイルこそ本物」
と言えるほどの忠実再現に感動しました。
何も問題なかった訳ではありませんが、このオーナー様の個体までは、まあまあ悪くなかった模様です。
こちらはショップAが無くなる寸前に購入したオーナー様の個体。
雑誌広告を見て、関東からショップAに電話注文。新品エンジンなど含めフルオプションで購入したそうです。
いよいよ納車日、陸送屋のローダーで運ばれてきたインターセプターは、ボタボタとオイル漏れしている状態。陸送屋は単なる運ぶだけの人なので、その場でショップAに電話。すると、こちらでは何ともなかった。と突っぱねられ終了。
仕方ないので近所のアメ車屋に持っていくも、相手にしてもらえず。
走っても「セルシオなのにカローラのエンジンが乗っているんじゃないかというくらい走らない」という異常な状態で、そうこうしている間にエンジンルームから煙が…
結局、購入後1000km走ることなく、10年近く放置しておられます。
この状態から走行できるように修復して再車検…までを業者に依頼すれば、軽く片手くらい覚悟が必要。この個体は消耗品だけではなく、エンジンとミッションの交換も必要になるからです。
この個体に限らず、ショップAが無くなる頃に購入したインターセプターは、どれも良い話がありませんが、そもそも解体車レベルからの修復車=中古部品、解体部品のオンパレードなので、コンスタントに良い物を供給すること自体が難しいのです。
単に解体車と言っても、過走行なだけで綺麗な個体もあれば、大事故からの修復履歴がある個体、ニコイチやサンコイチの個体がベースになっている場合だってあります(実際にあった)。
さらに、ゴミとゴミとゴミをくっつけて形にした…という状態であったとしても、販売車両として成立してしまうのです。
これには、日本のユーザーの「オーナーとして乗りたい、完動品が売ってるなら欲しい」と考えるイメージと、現地で作っている人の「インターセプターの形をした展示車を解体車から作るよ。とりあえず動くよ。」と、大きな温度差があるのもアレだったりします。
これ以外にも、最低でも5〜6台はショップAから購入した方がいるようですが、目撃情報が無いことから、現在はほとんど動いていないようです。
劇場公開から40年が経過した今となっては、新たにレプリカ販売をやること自体がナンセンスなので、悪質な業者が現れることはないと思います。
また、怪しいショップから買わなくても、国内で乗っているオーナーが手放すタイミングで交渉する方が遥かに安心ですし、実際に数台の販売車両がいま現在あります。
色々ありますが、伊達や酔狂で乗る極地きょくちのようなクルマなので、今後オーナーになる方達には、ぜひ格好良く乗ってもらいたいです😊