エクリプススパイダーの琵琶湖・チームローガン関東・あのベンチ・ジジイの大冒険(番外編)・コメ返いたしませんよーに関するカスタム事例
2019年09月23日 18時46分
Team's Lowgun 関東 クルマに限らず、動くモノなんでも 好きなおじいちゃんです(´∀`*) フォロー頂いてコミュニケーション取れる方なら喜んでフォロバさせて頂きます。 フットワークは軽い方なので、ミーティングや イベントに積極的に参加します。 超フランクなので、どこかで見かけたら お気軽にお声がけくださいねー(*´꒳`*) LINE ID:saboten926
あのベンチ
君は、湖から吹いてくる風に飛ばされないように、
水色のリボンがついたつばの大きな麦わら帽子をそっと手で押さえ、
眩しいくらいに白いワンピースの裾を気にしながら、
ベンチに腰掛けた。
告白しようとする僕に声援を送ってくれているのか、
ヒグラシが鳴いてる。
水面に夕焼けが映る様を、君は「もえているみたいね」と表現した。
自分の気持ちを見透かされたのかと思うその言葉に、
ドギマギしながら、「そうだね…」とだけ答え
同じ水面を見つめた。
どれくらいの時が流れただろう。
心地よい風が弱まり、夕暮れが深まり始めた頃
水面を見つめたまま、君がつぶやいた。
「私ね…お父様の仕事の関係で海外に引っ越すの」
あれだけ鳴いていたヒグラシが鳴きやんでいた。
僕は唾を飲み込む音が聞こえるんじゃないかと思うくらい喉が鳴った。
もう、会えないのかな?
僕がそう尋ねると
「短くても10年は向こうに居ると思う。」
「もし帰れたらまたこの日にここに来るわね」
きっと君はそう言ったんだろう。
目の前が見えていない自分を俯瞰で見ていた気がする。
その時、迎えの車が静かに停まり君は乗り込んだ。
窓ガラスが開き、僕だけが知っているあの笑顔で
「待っていてくださいね」と帰っていく君の乗った車を見えなくなるまで立ち尽くした。
あれから何人もの人がこのベンチに訪れた事だろう。
青春というにはあまりにも切なく、勇気を出せなかった自分を悔やんでいる。
来年もきっとここに来るのだろう。
今でも変わらない、僕だけが知っているあの笑顔で
君が座っている事を信じて。
おしまい