マーチのK10マーチ・EK10マーチ・マーチ R・マーチスーパーターボ・MA09ERTエンジンに関するカスタム事例
2022年02月23日 14時29分
リトルモンスターの心臓を大解剖
マーチR/スーパーターボ速さの秘密。1989
マーチの魅力
今年はマーチが速い。去年の後半からささやかれていた噂が
着実に実現化され、ラリーを中心にして実力のあるドライバーが
続々とマーチに乗り込んで登場してきた。
それほどまでマーチRが人気を集める理由は一体何なんだろう。
答えは簡単、その多くはターボとスーパーチャージャーを同時に
組み込んだエンジンの魅力にある。
クルマの評価はトータルバランスで行なうというのが常識で
あってもグロス57馬力エンジンを搭載したボディを発展させたものが
ベースというマーチRは、やはりエンジン先行型という感があるのは
否めないところだ。
このマーチRに搭載されているパワーソースは、ボア×ストローク
66mm×68mm、排気量は930cc、圧縮比は7.7、そしてパワーは110
馬力を6400回転で発生、トルクは13.3/4800、エンジン型式は
MA09ERTだ。
新登場した当時はグロス表示だったため、正確な比較はできない
としても、ネット表示になっている現在のキャブレター仕様
ノーマルエンジンの出力は52馬力、ターボは76馬力だ。
これに対するスーパーターボ仕様は110馬力だから単純に
比較してもR仕様のエンジンはノーマルの2倍以上の出力性能を
もっていることになる。
パワーの源はチャージャーだ!
この出力の源になっているのはターボチャージャーと
スーパーチャージャーだ。それも、かなり両チャージャーに
頼りきったセッティングになっていることが圧縮比の数字からも
分かる。
最近過給装置を備えたエンジンでも、圧縮比を高めにセットして
エンジンの基本性能を十分に発揮させようとする傾向が強いのだが、
それからすると7.7という圧縮比は驚異的ともいえる低さだ。
MA09ERTが、スーパーチャージャーとターボチャージャーを
同時装着したマーチのエンジンルームはかなり混雑している。
先端部分に電磁クラッチを装着したスーパーチャージャーは、
エンジンの奥深い位置に取り付けられているため、実際の
装着からターボチャージャーとスーパーチャージャーの関連を
想像しようとするとかなり複雑なように思えてくる。しかし、
図を元にすれば、二つのチャージャーの関係は簡単に想像できる。
空気の入口側から順番位置関係を見てみると、まず最初にあるのが
ターボチャージャー。ここを通った空気がスーパーチャージャーに
向かう。そして、この空気はインタークーラーを通ってスロット
バブルを通過し、エンジン内部に入って行く。
だが、スーパーチャージャーとターボチャージャーは、
いつも同時に働いているのではない。
MA09ERTエンジンに装着されているHT-10型のターボチャージャーは、
インターセプトポイントが4000回転にセットされているから、これ以上の
回転域はターボチャージャーの独壇場ようなもの。高回転域で
駆動損失が大きくなるスーパーチャージャーは4000回転を越えると
電磁クラッチがOFFになり、作動を停止してしまう。
このスーパーチャージャー部分にはバイバス通路が設けられている
のだが、これが、ターボチャージャーが送り込む空気の専用通路とも
いえるものだ。つまり、低回転域でスーパーチャージャーが過給の
主導権を握っている状態のときは、パイバス通路が閉まっている。
そして、高回転になると通路がオープンしてターボチャージャーが
送り込む空気がエンジンに送りこまれる。
また、両チャージャーの空気は最終的にすべてインタークーラーを
通過してエンジン送り込まれるレイアウトになっている。
高過給圧も特徴
低回転域はスーパーチャージャーが受け持つ。言い換えれば
この回転域はターボ不要ということだ。
そこまで割り切ってくれると、ターボのほうはまったく気楽。
ターボの特性と大きな関係があるA/Rは、高回転を重視した
仕様にすることができる。その結果が0.6というA/Rだ。
マーチターボに使用していたターボチャージャーはA/Rが
0.3だった。低回転での立ち上がりを補わなければならない
ノーマル仕様の苦しさが、このあたりに現れている。
A/Rが小さいターボは低回転でのピックアップはよいが、
高回転になると詰まりが発生し、ターボ本来の性能を発揮することが
できなくなる。しかし、低回転は無視しても良いということになれば、
タービンみコンプレッサーも大きくすることができる。そして、
その余裕が高過給圧をもかのうにしてくれる安全パイにもなる。
MA09ERTに装着されているHT-10型ターボチャージャーは、
最大過給圧が約0.9kg/cm2、これはマーチターボに装着されている
HT-07ターボの最大過給圧0.5kg/cm2を大きく上回っている。
エンジン本体はターボエンジンがベース、というより
ターボ仕様ほn関係はNAとほとんど変わっていない状態だから、
アルミブロック、5メインベアリング、アルミシリンダーヘッド
などという基本仕様は変わっていない。これが細かい部分の
熟成によって、どれくらい強度アップされているかが、
MA09ERTエンジン最終的な耐久性を占うポイントになりそうだ。
それは別として、マーチRに搭載されているMA09ERTエンジンは、
微妙な排気量に設定されていることも特徴の一つだ。
ノーマル仕様よりもボアを2mm縮小したMA09ERTエンジンは
現在の過給圧エンジンに課せられた係数の1.4を掛けると1.3
リッター僅かにオーバーする。また、この係数を外国で採用されている
1.7として換算すると、ノーマルの980ccは1600ccを越えてしまい、
R仕様の930ccだと1600cc内に納まる。さらにボアサイズを
ノーマル仕様の1mmアンダーサイズの67mmとした場合でも
1600cc内に納まらないという微妙な設定だ。
排気量区分を含めたモータースポーツのレギュレーションは、
かなり流動的に変更されることがあるものだが、これが先々、
国内のモータースポーツで、どんな意味を持ってくるかも
興味の一つになりそうだ。