マーチの日産マーチ・K10マーチ・MA10Sエンジン・解説記事・日産に関するカスタム事例
2021年06月06日 18時31分
2021年6月6日投稿。
ダブルチャージクラブオリジナル記事再録。
MA10S型エンジンについて
-解説/概要-
MA10Sは日産・マーチK10型の専用エンジン(987cc)として新開発された小型・軽量・高性能を狙って開発されたエンジンで日産自動車では初のシリンダーブロックの材質をアルミブロックとして当時1000ccクラスでは世界最軽量(AT車で整備重量69kg)のエンジンであった。電子制御キャブレター(ECC)エンジンで日産・マーチK10型標準仕様及び日産・Be-1、日産・パオに搭載されたエンジンである。基本的に市販使用は昭和57年10月~平成1年頃まで使用された。当初は排気系触媒の違いにより5MT車エンジン及び4MT用エンジンの2種類が在り、モノリス型酸化触媒仕様エンジン(MA10SのLグレード型5速仕様)とモノリス三元触媒仕様エンジンの2種類に分かれていた。K10初期型~中期間で使用、のちに後期型(1989年発売)の仕様では改良三元触媒に統一された。このエンジンの発展型としてMA10ET(ターボ付)、MA09ERT(スーパーチャージャー切り替え式ターボチャージャー)MA10E型(日産・ザウルスjr専用競技用インジェクション)、 輸出用としてはMA12S(1235cc)がある。
解説/全般
MA10S型エンジンは基本設計はその生産終了までは細部を除き、ほぼ同じである。 省資源を追求し燃費性能向上、小型軽量化を図り、かつ高性能、静粛性、信頼性も追求した日産としては新設計のエンジンであった。初期エンジン系列はMA10型酸化触媒仕様(触媒/パラジウム)及び、燃費向上性を図る様、空燃比フィードバックシステムを採用したMA10型三元触媒仕様(三元触媒+ECC※デジタル制御電子気化器+O2センサー)←(マーチL及び、5MT用)の2種類を設定した。エンジン本体はコンパクトな水冷4気筒エンジンで排気量は987ccとした。 動弁機構ではアルミダイカスト製のシリンダーブロックを採用、シリンダーレイアウトは4連サイアミーズ型を 採用、軽量化を図った。潤滑系ではシリンダーブロックの配列を等ピッチとし、かつ4つのボアを密着し、シリンダーブロックの全長を短縮した。燃焼効率を高めるため(ハイスクワール吸気ポート)半球形の燃焼室の中心付近に急速燃焼を 可能とするスパークプラグ配置とし、吸排気系はクロスフロー方式とした。強いスクワールを与える吸気ポートと スクワールを維持しやすい凹凸のない半球燃焼室、さらに高圧縮比(9・5)などによる燃焼効率の向上を狙った。 クランクシャフトでは鋳鉄製中空型とし、ピン部及びジャーナル部も中空化、軽量化を図った。 静粛性、信頼性向上を目指し、一体型メインベアリングキャップを採用、ゴム性タイミングベルトの採用、各部品の 剛性の向上などにより、振動、騒音、を低減、アルミ製シリンダーブロックの精密度をコンピューターによる最適設計で その剛性を高め、より高度な信頼性が得られるようにした。動弁機構はV型弁配置のOHC機構とし静粛、耐久性に優れた タイミングベルトで駆動している。 ・吸排気系、燃料系ではインテークマニホールドのブランチ形状を吸気をUターンさせて、吸気の整流化を可能とする 完全トーナメント型とし、中低速トルク重視設計、燃料分配、旋回性能、、キャブレーター整備性向上を図り、 優れた動力性能をも目指した。インテークマニホールド部には温水通路を設定しEGR回路を内蔵している。
・MA10酸化のキャブレターには温水加熱式フルオートチョークを採用、エンジンの暖気状態に見合った作動をするように している。・アイドル回転数補正装置を設定し、通常時のアイドリング回転数を低くし燃費向上性を図った。
・MA10三元には電子制御キャブレター(ECC)を採用、O2センサー及びモノリス型三元触媒(触媒/白金ロジウム)と 併せて、排気ガス清浄化、並びにフェールカット領域をできるだけ広くする事により燃費向上を図っていた。
・冷却系ではFF駆動化に伴うエンジン横置き搭載に関連して、電動クーリングファン付のラジエーターを設定した。 なおラジエーターは車種グレードの違いにより2種類に分類される。銅製ラジエーターがマーチE、Lで アルミ製ラジエーターがマーチS、Gに設定された。 ・MA10Sエンジンのマウントは右・左・後の3点支持とし、更にAT車には前後に、MT車には前側にバッファーロッドを 設定してある。
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- MA10S搭載車輌解説 -
*昭和57年10月新発売(初期型)K10-000001~
*形式EーK10型車、形式番号E(53年排出ガス規制適合車)-K10(車両形式)。
*届出類別記号例、G(仕様)A(自動)W(パワーステアリング)B(衝撃吸収バンパー)
*社内記号例、K10-G(仕様)A(変速機)P(パワーステアリング)B(熱線リヤウインドー)
-マーチ初期型車種仕様、形式-
*3ドアハッチバック1000㏄(987㏄)
変速機、4速/5速/自動3速
*マーチE(4M/Tのみ)、K10S、K10SB
*マーチL(4M/T、5M/T、3A/T)、K10、K10B、K10YF、K10YFB、K10A、K10AB
*マーチS(4M/T、3A/T)、K10D、K10DA
*マーチG(4M/T、5M/T、3A/T)K10G、K10GF、K10GA
*マーチG/パワーステアリング車(4M/T、5M/T、3A/T)K10GP、K10GFP、K10GAP
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-MA10エンジン初期型主要諸元表-
*MA10酸化触媒仕様/トランスミッション4MT/3AT。
※数値( )内はMA10三元触媒仕様/トランスミッション5MT
総排気量(cc) 987
燃料室形状 半球型
弁機構 OHC
内径×行程 68・0×68・0
圧縮比 9・5
圧縮圧力(kg/c㎡/rpm) 13.5/350
最高出力(ps/rpm) 57/6000
最大トルク(kg-m/rpm) 8.0/3600
最小燃料消費率(g/ps・h/rpm) 210/3600
寸法〔長×幅×高〕(mm) M/T車、609×563×625 A/T車、609×563×616 (609×563×625)
パワーステアリング付酸化触媒仕様寸法
〔長×幅×高〕(mm)
M/T車、625×563×625。A/T車、625×563×616
整備重量(kg) M/T車、71 A/T車、69 (70)
弁開閉時期、吸気開〔上死点前〕(度)
M/T車、11、A/T車、15、(11)
弁開閉時期、吸気閉〔下死点後〕(度)
M/T車45、A/T車45、(45〕
弁開閉時期、排気開〔下死点前〕(度)
M/T車、51 A/T車、51 (51)
弁開閉時期、排気閉〔上死点後〕(度)
M/T車、7 A/T車、11 (7)
弁すき間、吸気〔温間〕(度) M/T車、0.25 A/T車、0.25 (0.25)
弁すき間、排気〔温間〕(度)
M/T車、0.30 A/T車、0.30 (0.30)
点火時期/アイドル回転数
*アイドル(BTD℃/rpm) M/T車、15±5/700 A/T車、12±5/900 (18±5/750)
点火時期/アイドル回転数
*イニシャル(ATD℃/rpm) M/T車、2/700 A/T車、2/900 (2/750)
アイドルCO/HC濃度(%/ppm)、
※〔整備目標値〕 A:二次空気導入時(空燃費比フィードバック作動時) M/T車、0・5以下/200以下。A/T車、0・5以下/200以下。(0・5以下/200以下) B:二次空気カット時 M/T車、1.5/800以下。A/T車、1.5/800以下。(1.5/800以下。)
エンジンオイル〔工場出荷時〕 10W-40
オイルパン容量〔Hレベル〕(L) 3.0
オイルフィルター容量(L) 約0.2
冷却水容量(L) 約4.0
*NAPS仕様一覧
エンジン仕様2種、 MA10酸化触媒/MA10三元触媒
燃料装置、 シングルキャブレター/シングルキャブレター
温調エアクリーナー、自動/自動
アイドルコンペンセーター作動温度(℃)、55/55
始動補助装置、 温熱加熱式フルオートチョーク/電気式オートチョーク
吸気加熱方式、温水加熱/温水加熱
NOx 低減装置、EGR装置(方式) 負荷比例式/負荷比例式
NOx 低減装置、TVバルブ(2)作動温度(℃) 50/50
CO,HC 低減装置、-触媒種類- モノリス型酸化触媒/モノリス型三元触媒
CO,HC 低減装置、触媒コンバーターサイズ(L) 0.5/0.7
CO,HC 低減装置、EAI装置 有り/無し
CO,HC 低減装置、TVバルブ(2)作動温度(℃) 40 /設定無し
減速時排気ガス減少装置、フェールカット装置 有り/有り
減速時排気ガス減少装置、ダッシュポット A/T車のみ有り(タッチ回転数、2000rpm)/設定無し
空燃費比制御装置、パワーバルブ及び、バキュームコントロールバルブ/ECCコントロールユニット及びO2センサー
点火時期制御装置、アイドル点火時期制御/アイドル点火時期制御
排気温度警報装置(℃)、940/940
燃料蒸発(エバボ)ガス抑止装置、キャニスター式/キャニスター式
ブローバイガス還元装置、クローズド式/クローズド式
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原文、出典/執筆、
ダブルチャージクラブ ek-10stとやま
2006年7月18日投稿 生前分与の為ウィキペディアに投稿済み