Sクラスセダンのベンツ遍歴 ⑥ V126.560SEL・追憶に関するカスタム事例
2023年11月22日 17時29分
Sクラス4台目、V126.560SELです。
時は、2020年…。
222.S550プラグインロングを所有してから5年経過して、次の223のスクープ画像をネットで見かけるようになっていました。今までの流れで行くとそろそろ乗り換え検討。けれど、どうしても乗り気にはなれませんでした。
「最新のベンツがもっとも優れたベンツ。しかし…」…ある雑誌で新旧のベンツのSやグロッサー600を中心に歴代モデルを何台も所有するコレクターの方の言葉を目にしました。
生意気かもしれませんが、私もその「しかし…」について同じ意見でした。
走行性能や安全性、そして快適装備は代を追うごとに充実しましたが、どこか「成長が止まった」「行き着くところまで到達してしまった」感じがしました。いつからかSクラス自身が変化を拒みはじめた気がしてなりませんでした。
221から222に乗り換えた時、いかにも「キープコンセプト」だと、特にそんなことを感じました。(Sクラスの未来形はおそらく後に出た「EQS」なのですが、セダン=「ちゃんとトランクリッドがある」派の私はデザインがどうしても受け入れられません)
加えて、Sクラスのリセールの悪さです。
買う時はそれなりの値段がしますが、乗り換える時の査定金額の低さ。価値の喪失=所有して楽しんだんだから…と割り切れる余裕ある方の乗り物だと。
先に触れた221のエアサス故障の時、あまりに修理費が高いので、ディーラーにこぼすと…「社長。1,000万円クラスのクルマの100万円の修理費は、100万円のクルマの10万円と同じなんです」と返ってきました💦
222でもコマンドコントロールのドライブ本体交換を2回経験。保証のため無償でしたが、ドライブ本体が1つ約65万でした。
メーカー保証が切れたら、それがまともにかかってしまいます。これでは、誰もが買って、容易く維持はできない。
査定がドカンと落ちるのもうなづけます。
もとより余裕がなくケチな私は次第に新しいSクラスへの乗り継ぎを躊躇い始めていました。
ですが、Sクラスというクルマの歴史やクルマとしての安定感、所有することの満足感を認めていて、必ず1台は手元に置いておきたかったのです。
免許取得して以降、124ミディアムから始まり222.Sに至った自分のベンツ遍歴の中で、やはり鮮烈な印象として残っているのはオーバークオリティと言われた時代の124でした。
ちょうどその頃、その時代のネオクラシックベンツは底値をうち、相場が上がり始めていました。
次は「リセール」「オリジナリティ」…その両方を満たす126.Sクラスにしようかなぁと思いました。
長年世話になっていたディーラーでの新車購入は
リセール抜群の463.ゲレンデGのディーゼルにすることにして、いよいよ126・Sクラスの購入を決意し、色々な126を物色しました。
維持費や整備性から直6の300SEも検討。でも、ロングホイールベースのSELがスタイル的には好み。
では、420SELか560SELか…。
420か560かの迷いは、560はエンジン容積が大きくホースやハーネス類が熱でダメになる確率が高いという専門家のアドバイスでした。その点では、420の方が幾分か熱の逃げ道が確保されているのかなぁと(ストローク長の違いだとエンジンの大きさはほぼ同じですね^^;)そして、自動車税も420の方がお値打ち。ただ、タマ数が少なく…。
そして、距離浅にするかある程度常識的に距離が乗られたクルマにするかということ。
距離浅かどうかについては、色々なアドバイスをもらいました。
距離浅車は確かにシートなどの擦れやへたりが少なく魅力的ですが、クルマは火を入れて動かされていた方がコンディションを維持できているという意見も。
実体験として、以前乗っていたY30グロリアは距離浅の3万キロ台のモノを手に入れましたが、その後エンジンブローによるエンジン載せ替え、そしてラジエター内部、燃料タンクの腐食による不具合を経験しました。280SLも極端に乗り出さなかったせいで、エンジン分解するはめに。
年式相応の距離を飛んだクルマは、消耗部品なども定期的に交換されているため、調子がいいのではという考え方。
色は…。
カラーナンバー.904‥ミッドナイトブルー‥
かつて、ブリリアントシルバーやブルーブラックと並びベンツの80年から90年代の定番カラーでした。
我が家の初ベンツ124.300E、そして2台目の210.E320もミッドナイトブルーでした。
ミッドナイトブルーの560SEL、できる限り熟成された最終型。内装は革ではなく、今まで所有したことがない定評ある布のベロア地で。
そんな条件を挙げ、探して、結局、2台のミッドナイトブルー560が最終候補に。
1台目は、中古車情報ネットで見つけた東京の外車専門店に並ぶ1991年最終型の560SEL。走行距離5万キロほど、名古屋の2桁ナンバーの法人ワンオーナー車。価格は本体250万。
そしてもう1台は、メルカリに載っていた1990年の馬力アップされた後のやはり最終モデルの560。走行距離10万目前、埼玉の運送会社所有のワンオーナー車。価格は込み込み160万。
時間を見つけて、同じ日に、2台を実際に見に行きましたが、法人車両らしくディーラー工場で「おまかせ整備」を施され、両車ともメンテが行き届いた良質なクルマで、走行距離の違い以外の差を見つけられませんでした。
迷わず、メルカリの価格が安い方に決定。
(最近知りましたが、定期整備をしてもらっているディーラーでは私の560のことを「メルカリ126」だとか「メルカリ560」と呼んでいるようです笑)
現行モデルから、古いモデルへの乗り換え。
型が変わるたびに新しいSに乗り換えていたのが一変。
家族も含め周りからは「変人」扱いされました💦
560の印象は…
気に入っているところは沢山あります。
なんと言っても、マイスターの国・ドイツのクルマらしく「カチッ」とつくられているところ。
それは…
よく言われていますが、ドアの開閉時のまるで「金庫」を開け閉めする感覚。「ガシャ!」という音と感触。
まるで「岩の上にいるような」分厚くて丈夫なものに腰かけているような感覚。それでいて、しなやかな乗り心地。(560は後輪に油圧レベライザー装備ですが、基本はメカニカルで、エアサスなどの電子制御技術を使わずにゴム製ブッシュや複雑な構造を採り入れて仕上げられています。それでいて、絶妙な乗り味を出せていることに驚きます。)
燃費はどんなにしても5キロほどで、最悪⤵️ですが、「エンジンが良い仕事して、回っています」という感じのトルクフルな走り。
「簡素」だけれど必要にして充分、突き放しているような「質実剛健」な装備類。
一点一点のパーツにふんだんにコストをかけて、それを組み合わせてカタチになっているといった品質感。
不満点もあります。
経年劣化からくるきしみ音。特にサイドガードの役割りを果たす「サッコプレート」の歪みからくるきしみ音が酷いこと。
アドバイスを受け覚悟はしていたのですが、ホース類の劣化も激しいこと。
また、吸気や燃料伝達など総じて非常に凝った機構のモデルのため、一旦不調になるとバランスを取り戻すのが難しく、専門知識を持った熟練整備士さんでなければ復調できないこと。
「ボロいベンツ乗りやがって…」と言わんばかりの最新ベンツによる煽り、ヒエラルヒー…。
(これは560のせいにしたら可哀想ですが笑笑)
抽象的な表現でしたが、総じて満足感は高いです。「ベンツらしいベンツ」ということを体現しているモデルだと感じております。
別に持つ280SL 同様、「一生モノ」にすると決めた560SEL。
いまや自動運転の時代ですが、アナログな私にはとても心地よくちょうど良いクルマです。
(私が所有してから、機関的には先述の後輪油圧レベライザーのアキュームレーター交換とステアリングポンプ、燃料ポンプ、ラジエーター交換を。外装では、大きなクルマお決まりのバンパーの傷補修、エクボ傷のデントリペアを施しました。安価な割に「当たり」の車輌だったようで、総じて少ない出費で済みました^_^)