コルベット クーペのコルベット・業界小咄・技術小話に関するカスタム事例
2018年10月15日 18時49分
2輪/4輪/他、国内外のレースでデータロガーやECUを扱う電気系レース屋が副業。昔はバイクで8耐とか走ってました。 写真はほぼ携帯、時々NikonDfです。 C7 Z06にはこれから手を入れていく予定です。 よろしくお願いします。
正解はこいつ。
Heat Extractor。ボンネットフードの排熱用のスリットです。正解者多数!
市販の大馬力エンジンにおいては、冷却系は基本全っ然足りてないので、やり過ぎるという事はありません。
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以下、理論やレース好きのマニアのためにさらっと書いてみます。
内燃機関の熱効率が30〜40%と言う事は、馬力を出せば出す程、それに倍する排熱が出るという事になります。
具体例としては、普通のガソリン1L(※1)はサーキットでは約1分で消費されてしまう(※2)ので、実質、400kJ/秒位の熱を何とかしないといけません。これは約100kcal/秒ですから、丁度1Lの水が毎秒毎秒100℃になる熱量です。
※1 : 熱量約35MJ
※2 : 鈴鹿で平均150km/h、燃費2km/L程度
つまり、Z06のクーラント全量10.8Lをたった10秒でオーバーヒートさせる発熱がある事になります。
実際にはオイル系やエンジン本体、排気系からの放熱もあるので、ラジエータの負担は何分の一かになりますが、全開走行中のエンジンの発熱はこの位凄まじいものです。
特に真夏のアスファルト上の吸気温度は50℃を超え、目標水温の85℃までの温度差はわずか35℃。冷却効率は真冬の半分になります。
F1なんかは冷却水を3気圧(レギュレーションで規定)まで加圧し、120℃以上の水温で熱効率を上げていますが、当然、特殊な設計と配管が必要です。
市販車ではせいぜい1.5気圧、105℃までを限界とするべきでしょう。それでもこんな温度ではECUはエンジンを守るために燃料冷却を行い、空燃比が理想値よりかなり濃くなるので、出力は落ちます。
想定温度から離れた温度域では、エンジン内部の構成材の熱膨張率の差から各部のクリアランスが変わり、余計な摩耗も進みます。
もちろん、オイルも劣化します。
オイルについては、「このオイルの耐熱温度は170℃だから110℃程度なら大丈夫」とかいう人も居ますが、間違いです。
油温計のある所はあくまでオイル溜まりで、実際にオイルが壊れているのは、カムトップやピストンリング界面の極小ポイントです。そこは瞬間的に何トンもの力がかかり、数百度の温度になっています。中でものが爆発しているんですから、どんなオイルでも必ず劣化は進みます。
冷却に話を戻すと、可能であれば夏場に踏み続けても85℃をキープする冷却系が欲しい所ですが、500馬力以上のエンジンの市販車では現実問題としてかなり難しいです。出来るだけのことをしても、真夏は何周かに一度のクールダウンラップが必要になる事は多いです。
温度の話は面白くて、排気温度をどこまでは高く保つかとか、吸気ラインをどうやってエンジンの熱から隔離するかとか、室内に排熱するとドライバーが熱中症で速攻倒れるとか、色々ネタはあります(笑)。
そうそう、カーボンの吸気ダクトとかよく見ますが、カーボンは熱伝導がめちゃめちゃ良いので、エンジンルームの熱を受けてしまって完全に逆効果です。体感できるレベルで馬力落ちると思いますが、あれ、誰が売り始めたのか本当に疑問です。(アルミもだめですよ)
取り留めなくなりましたが、リクエストのあった業界技術小話でした(^_^;)
最後までお付き合いいただいた方、ありがとうございます(^^)/