SLのSLと私 ⑫完・追憶に関するカスタム事例
2023年10月28日 06時49分
SLのお話‥ラストです。
手に入れて1年余り経ち、また歳も暮れようとしていた頃、ようやく自分のもとにSLが戻る日が近づいてきました。
鈑金が仕上がり、外したパーツが再び組み付けられていきました。
グリルフレームは、社外の物を試しましたが、同じような歪みが出てしまい、交換前と全く変わらなかったため、高価でしたが純正の物を装着しました。
その他のレストア箇所は以下の通りです。
・エンジン以外を取り外したシャーシ部分の
剥離を伴う錆落とし、切継、鈑金など
・ハードトップ、ボディー全体の内側の剥離を伴う錆落とし切継、鈑金
・トランスミッションのOH
・ラバー部品の全交換
・メーターケーブルの交換
・吊り下げ式クーラーのOH
・ホイールリングの装着
・レバー類の整備
改造箇所
・ボンネット内部のインシュレーター取り付け(W126Sクラスの物を改造して使用)
・オーバーヒート対策として、サブファンの追加(自動作動式)
・アイドリング回転数の切替スイッチの新設
・ブリヂストン製のホワイトリボンタイヤへの交換
・バッテリーのキルスイッチの新設
本格的な「レストア」とは言えない内容なのかもしれませんが、結果的に、期間として約1年余り、費用は当初の車両代と同じぐらいを費やすことになりました。
内装関係は後回しに(初回レストア後、程なくして当初お世話になっていたメカニックさんが若くして急逝され…。その後、新たな主治医を探すことに。そして、出会ったいまの主治医の元で約2年の歳月をかけて、2020年に内装一新と機関の再レストアを完了しました☞そのお話はまた)
再び納車となったSLに乗って、最初にドライブしたのはどこだったのか‥不思議なことによく覚えていません。
SLと出会ってから今日まで、この一台のクルマで色々な思い出をつくってきました。
妻と初めてデートしたクルマはSLでした。
結婚して、娘が生まれて‥そして、また娘が生まれて‥。一番上の娘が、幼稚園年中児の時、オープンにしての2人きりでのドライブ中に「パパ、かわいそう。悪い人に屋根とられちゃったんだね。私が大きくなったら屋根を直してあげるね。」と言われたこと‥。
衰弱していく父と男旅に出かけたこと‥。
会社の運転資金捻出のために何度も手放そうとしたこと‥。
仕事、家族‥決して平坦ではなかった私の青年期から壮年期‥SLは常に自分のそばにありました。
SLを手に入れてから経験したこと…
出会いや別れ…。
自分がこのSLと共にしてきた時間の重みをあらためて感じます。
W113が生産されたのが主に1960年代で、後期モデルとはいえ、私の280SLも車齢で50年を越えました。
半世紀を走ってきたクルマにとっての私との20年はほんの一コマの出来事なのかなとも思います。
危険を教えてくれるわけでも、勝手にブレーキをかけてくれるわけでもない‥現代のクルマに比べてお利口ではないけれど、どのように走り、曲がり、止まればいいのかを「自分でつかめ!考えろ!そして楽しめ!」とSLは私にことあるごとに語りかけてくれるような‥。
「人付き合いは、会話の『間』を‥。そして、文章を読む時は、行間を読め。」‥亡き父に教えてもらったことです。
SLも、私に心地よい「間」を与えてくれる。
W113 280SL‥このクルマとこの先も…。
終わり