フライホイールの役割やその構造はどうなっているのか | CARTUNEマガジン
フライホイールの役割やその構造はどうなっているのか

2019年06月05日 (更新:2020年08月27日)

フライホイールの役割やその構造はどうなっているのか

名前を聞いたことがあってもその役割や構造についてはあまり知られてい部品の1つがフライホイールです。今回はフライホイールの役割や構造、そして軽量フライホイールの特長などについて説明します。

フライホイールの役割

あきKing of street 関西支部さんのアルトワークスCR22Sの画像
あきKing of street 関西支部さんのアルトワークスCR22Sの画像
引用元:あきKing of street 関西支部さんの投稿

エンジンのアイドリングを安定させる

フライホイールの役割の1つはエンジンのアイドリングを安定させることです。アイドリングつまりは低回転時でもエンジンが止まらないように働くことになります。何故エンジンのアイドリングを安定させるためにフライホイールが必要になるかというと、エンジンの燃焼行程ではトルク変動が発生していて、それだけではアイドリングを安定させることができないからです。

エンジンが生み出す力だけでは安定しない

あご金造(又の名を 猫の手)さんのカローラレビンAE86の画像
あご金造(又の名を 猫の手)さんのカローラレビンAE86の画像
引用元:あご金造(又の名を 猫の手)さんの投稿

4サイクルエンジンを例に説明すると、4サイクルエンジンが動力を生み出す工程は「吸気・圧縮・燃焼/膨張・排気」という4つの行程(サイクル)によって構成されています。

このうちピストンを燃焼ガスの圧力でピストンを押し下げる燃焼/膨張行程でのみ力が発生するのです。つまり、それ以外の行程では燃焼/膨張行程のような力が生み出されていないのでトルク変動が発生し、このままではアイドリングが安定しないということへつながります。

そうなればエンジンストールが発生する可能性も高くなるのです。そのような状態では安心・安定して車を走らせることはできません。

フライホイールの慣性モーメントを利用してアイドリングを安定させる

安定しないエンジンのアイドリングを安定させるためにフライホイールを利用します。フライホイールの回転運動によって生み出される慣性モーメント(つまりは円盤であるフライホイールが回り続けようとする運動のこと)を活用することで、クランクシャフトの回転を安定させるのです。エンジンにとってフライホイールな無くてはならない存在として活躍しています。

フライホイールの構造・仕組み

GSSよだれむし(DE連合)さんのデミオDE5FSクラッチの画像
GSSよだれむし(DE連合)さんのデミオDE5FSクラッチの画像
引用元:GSSよだれむし(DE連合)さんの投稿

フライホイールは上述したように円盤のような形をしています。さらに外側部分が歯車になっているのも特徴的です(これについては後述)。その内部を見てみると、中にはフライホイールダンパーと呼ばれるスプリングが入っています。

フライホイールはクランクシャフトの端部分でなおかつミッションのある側に取り付けられていて、クランクシャフトが回転すると同時にフライホイールも回転するという仕組みです。

少し補足をしておくと、シリンダー内のピストンとコンロッドが燃焼/膨張行程で押し下げられることでクランクシャフトが回転します。こうして、エンジンのアイドリングが安定するというわけです。

クラッチとのつながり部分でもある

フライホイールはクラッチディスクとのつながり部分でもあります。ですので、エンジンの動力を駆動系に伝えてタイヤを回転させるために必要不可欠な部品でもあるのです。端的に説明すると、プレッシャープレートという部品がクラッチディスクをフライホイールに押さえつけることでクラッチディスクが回転するという感じになっています。

フライホイールの歯車はスターターからの回転を伝える

フライホイールの外側にある歯車はエンジン始動時に使うスターターモーターの回転を伝えるために存在しています。つまり、アイドリングを安定させることに加えてエンジンを始動させる役割も果たしているのです。

トルクコンバータ装着車両にはフライホイールは無い

一部車両にはトルクコンバータと呼ばれる駆動系部品が装着されています。トルクコンバータが装備された車両にはフライホイールが採用されていません。トルコンとも呼ばれるこの部品はAT車やCVT車に多く採用されています、つまりMT車にはフライホイールが使われているということです。

フライホイールの交換に掛かる費用

タイG さんのステージアWGNC34クラッチの画像
タイG さんのステージアWGNC34クラッチの画像
引用元:タイG さんの投稿

ここではフライホイールの交換に掛かる費用について紹介します。

部品代

フライホイールの価格ですが、メーカー純正品で大体10,000円から60,000円くらいです。フライホイールの価格は車両によって異なりますので、これくらいの価格差が発生しています。

そもそも、フライホイールはそれほど簡単に消耗・壊れるようには作られていません。確かにクラッチなどは消耗品ですのですり減ってきたら交換しますが、純正状態で乗っているような程度であればフライホイールの交換に迫られることはよほどのことが起きない限りはないでしょう。

工賃

フライホイール単体の交換作業という事例があまりないので工賃を算出することは少し難しいです。しかし、フライホイールを純正品から社外製の軽量フライホイールなどに交換するケースはあります。軽量フライホイールに交換するということは、同時にクラッチを社外メーカーから発売されている強化クラッチに交換するのがほとんどです。

なお、フライホイールを交換する良いタイミングとしてはクラッチ系の部品を交換する時になります。クラッチ系の部品というのはクラッチケース/クラッチカバー/レリーズベアリングのことです。車種によりけりですが、これらの交換に掛かる費用は部品代で20,000円、工賃で30,000円くらいは少なくとも掛かると考えてよいでしょう。

軽量フライホイールについて

やまねこさんのマーチAK12フライホイールの画像
やまねこさんのマーチAK12フライホイールの画像
引用元:やまねこさんの投稿

上記で軽量フライホイールについて少し述べました。実はモータースポーツのような走りを追求する場面では純正フライホイールの代わりに専用のフライホイールを取り付けることがあるのです。

ここでは軽量フライホイールについて、純正品との違いやメリット・デメリットなどをお伝えします。

軽量フライホイールはレスポンスアップに効果的

とーるさんのアルテッツァSXE10ホイールの画像
とーるさんのアルテッツァSXE10ホイールの画像
引用元:とーるさんの投稿

軽量フライホイールは純正品と比べてより軽量に設計されたフライホイールのことです。軽量フライホイールを純正品の代わりに採用することのメリットはエンジンのレスポンスを高めることにあります。純正品よりも軽く作られたフライホイールを使うことでエンジン回転数の上がり方をより軽快にすることができるのです。高回転のおいしいところを使うことでより速いタイムを目指すモータースポーツでは需要の高いアイテムとなります。

ここできになるのは、どのようにフライホイールを軽量化するのかということです。具体的にはクラッチに特殊鋼やアルミニウム合金の採用やフライホイールに穴をあけて軽量化といった方法が為されています。

軽量フライホイールによる弊害・デメリット

ねこ吉さんのMR-Sフライホイールの画像
ねこ吉さんのMR-Sフライホイールの画像
引用元:ねこ吉さんの投稿

このように高回転でエンジンを回すような場面では軽量フライホイールの価値は高いです。しかし、軽量フライホイールを採用することで発生するデメリット・弊害も存在します。

まず、アイドリング時の安定性の低下です。大前提に戻りますが、フライホイールの本来の役割は車のアイドリングを安定させることです。そのためにフライホイールをクランクシャフトに装着することで慣性モーメントを発生させるのですが、フライホイールを軽量化するということは慣性モーメントで発生する慣性の大きさを減らすということになります。そうなると、トルク変動による影響をより受けやすくなってしまうのです。

軽量フライホイールを装着した場合には今まで以上に全ての運転操作、特に坂道操作などではシビアになりますので、装着する場合にはそのあたりも覚悟しておきましょう。

まとめ

今回はフライホイールについて、その役割や構造・仕組み、部品の交換費用や軽量フライホイールの特長やデメリットなどを紹介しました。

エンジンのアイドリングを安定させるうえで重要な役割を果たしている部品であり、スターターモーターの回転を伝えてエンジン始動にも貢献し、さらにはクラッチディスクと一体になって回転するなど、見えないところで幾多もの役割を果たしている部品、それがフライホイールです。

普通に乗っている分には純正品しか使わない部品ですから、それほどこだわるところではないかと思いますが、エンジンのレスポンスを高めたいといったことを求め始めた際にはそのデメリットをカバーできるようなセッティングにすること前提で装着しましょう。

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