1シリーズ クーペのN54・DIY・Tuner Pro・DMEチューン・バルタイ調整に関するカスタム事例
2024年12月09日 09時23分
VANOSのマップを弄って高回転時の空気吸入量を増やします。
シリンダーへの吸入量を上げる前に、現状の状態をまず確認します。
VANOSのマップと、実際の走行時のログからどこを弄らなければいけないのかを割り出します。
このログは3速の時ですが、ブーストの落ち込みポイントを見る限りでは負荷170以上の5500rpmからを調整する必要がありそうです。
基本的にアクセルをべた踏みの高負荷時にしかブーストの挙動に影響は無いので、隅っこの2セルとその外周1セル程度、つまり6セルをいじればとりあえずは良いはずです。
ハーフスロットル時等も考慮するとこの限りではありませんが、とりあえず今回はスロットル全開だけをターゲットにします。
では吸気と排気、どちらを調整したら良いでしょうか?
前回立てた予測として、高回転でブーストが垂れる原因を排圧不足と仮定しました。
排圧不足の原因はいろいろありますが、高回転時の空気の流速が速い状態でタービンのアクチュエータが閉まっている時間が増える方向へマップを変えても変化が無かった(様に見える)のが今までの流れです。
これはつまり、吸気バルブは開いているもののピストンの下降具合に対してシリンダー内に流れ込む空気が塞き止められている割合が多いという現象が考えられます。
ピストンが下降端に近い位置で、今よりも吸気バルブの開き具合が大きい状態が望ましいと考えられます。
つまり吸気バルブの開くタイミングを遅らせれば(数値を増やせば)、現状よりも多くの空気が入ってくれるはずだと想定できます。
理屈上はそうですが、この仮定は合っているでしょうか?
一般的に高回転域ではオーバーラップを取っておくと良いとされています。
吸気バルブの開くタイミングを遅らせるとオーバーラップはどう変化するでしょうか?
そもそもオーバーラップを取っているでしょうか?(取っていない車もあります)
確認が必要です。
この表は上図の純正マップをベースに吸気と排気のバルブのオーバーラップ量を示しています。
ちなみに純正カムのプロファイルを調べたところ、
吸気側のカムは239°で9.6mmリフト
排気側のカムは263°で9.7mmリフト
の様です。
VANOSで指定可能な角度の範囲は
吸気側70-125°(ATDC)
排気側80-135°(BTDC)
ということもわかりました。
一旦リフト量は無視して、プロファイルの角度だけで純正マップの値を当て嵌めてオーバーラップ量を計算すると、6000rpmの時には27°のオーバーラップがあることになります。
でもこれだけだとTDCに対してオーバーラップがどの程度の配分になっているのかよくわからないので図にして確認します。
ちなみにTDCとは「Top Dead Center(上死点)」の略で、AはAfter、BはBeforeという意味になります。
現在のオーバーラップ量を図にするとこうなります。
27°からどの位狭めていいかは走ってみてパワーカーブとブーストの推移を確認しないとなんとも言えませんが、少なくとも吸気バルブの開くタイミングを現状より遅らせても大丈夫そうな事がわかりました。
マップを弄り始めます。
こんな過程を経て、吸気バルブのタイミングを弄っては走ってログを見て、また弄っては走ってログを見て・・・を繰り返し、まあまあ良い塩梅に一旦辿り着きました、というのがこのブースト推移の図です。
手前の3000rpmあたりでは1.29barくらいに到達し、そこから少し下がりながらも回転を上げて再びブーストが盛り返すという状態に持ってくることが出来ました。
しかも、今まで弄っていたWGDCのマップを元に戻した上で、です。
マップを弄ってブーストを盛ろうとしても盛れなかった今までとは雲泥の差になります。
アクチュエータがゲートを閉める量の絶対値(時間ではない)を更に上げればブーストも上がりますが、タービンに負荷が増えるので出来れば避けたいところです。
また、シリンダーにより多くの空気が入り込んでいる様子が判断出来る一因として、排気音が大きくなりました。
爆発のエネルギーが大きくなったことにより、音も増大しています。
まるでStage2+の様な音と、ブースト推移に近づいてきました。
空気の流速が上がっているので点火タイミングも早める必要がありますが、とりあえず調整の方向性は間違っていなかった、ということが確認できました。
引き続きVANOSを弄り続けます。